オムライスは、薄焼き卵で包んだチキンライス(ケチャップライス)である。「五大丼、三大ライス」と言われるが、缶詰やインスタント化できないため大衆化の波から取り残され、カレーライスとハヤシライスの陰に隠れていた。昔は卵自体がごちそうだったが、三十年前と値段があまり変わらない物価の優等生であったがために、相対的価値が下がってしまう「不幸」もあった。最近ようやくオムライスは雑誌の特集に組まれるなど、脚光を浴ぴてきた。しかし、レトルトや冷凍食品が出たり、変わりオムライスも出現、昔ながらのシンプルなものは見られない。村越さんは「小細工をしない当たり前のオムライスが一番難しい」という。そのオムライス作りを厨房に入り込んで見せてもらった。
中身は自家製チキンハム、マッシュルームの薄切り、タマネギのみじん切りを妙めたソテーオニオンで、いたってシンプル。これをご飯とともに妙め、塩、コショウをしてケチャップで味を付ける。材科が空中に踊るフライパンさばきは見事。ごはんの粒の形が崩れないのはさすがである。
これから一人前ずつの作業だ。フライパンを熱して油をなじませ、たっぷりのバターを投げ込む。一つあたり二・五個の溶き卵をフライパンに流し込み、さっとかき混ぜ、準備した中身を一人前乗せる。そのまま皿にひっくり返すとアラアラ不思議、オムライスが出来上がり。この間約十秒。電光石火の早業だつた。「卵を薄く焼いて形づくったラィスの上にかぶせる方法と、オムレツを作り途中にライスを入れる方法がある」という。同店は後者である。
オムライスは形を整え、ケチャップをかける。かけかたもいろいろあり、同店は中央から奥へ流すスタイルをとっている。白い皿の上のオムライスは美しい。ふっくらと張りつめた黄色の紡錘形。それに一筋のケチャツプの朱。付け合わせのパセリの緑−こんなに単純な形と色の組み合わせの料理がほかにあるだろうか。M美記者がポケットから出した使い切りカメラでオムライスを撮影した気持ちが分かった。ふんわりした卵の膜をスプーンで突き崩すと、恥ずかしそうに朱色に染まったラィスが顔をのぞかせる。フレッシュバターとトマトの香りが食欲をくすぐる。半分まで一気に食べた。タマネギのほのかな甘み、チキンハムの味わいがケチャップ風味と絶妙なハーモニーを醸し出していた。
村越さんは「高級料理とは違うので、普段の総菜のように作る。卵はたっぷりと、しかもやわらかく。具はシンプルにし、癖のあるものは入れない。ケチャップはしっかりと使う」と、こだわりぶりを話す。M美記者は「絵本に出てくるようなきれいで素朴なオムライスで、今まで食べたなかで理想に近い。卵がしつこくないし、チキンライスもべたっとせずおいしかった」と大満足だった。
【取材を終えて】 オムライスだけで同店を紹介するのは気がひけるので、洋合屋っぽいメニューとして自家製ドミグラスソースを使ったハヤシライスと、ピーフシチューをぜいたくに使ったロイヤルライスをおすすめしたい。 ドレッシングからブイヨン、ペーコンなどすべて手づくりで、科理で使うハーブも自家栽培である。シュークリーム(販売期間限定)やアイスクリームも美味なことを付け加えておこう。
紹介したオムライスは同店のメニューにない。ぜひ食べてみたいという方ね今回は特別に予約を受け付けるという。希望日の前日までに「上越よみうりで見た」と言って申し込むこと。電子メールは二、三日前まで。メールのアドレスは<sinyoken@avisnet.or.jp>、インターネットのURLは、<http://www.avisnet.or.jp/~sinyoken>。「新洋軒」は新井市朝日町一丁目でJR新井駅前通り。電話○二五五(72)二一四九。(川村)
■川村さん、M美さん、上越よみうりスタッフのみなさんありがとうございました。
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